電波塔とアンテナのニュアンス

 http://d.hatena.ne.jp/plummet/20060505/p2


 ややこしくなりそうな気もしたので少しの時間を置いて他の人の反応を
見ていたりもしたのだが、結局そのまま「取材体験記」に移行し始めたり
してしまっているので、ちょいとおかしくなる前に突っ込みを入れて見る。


 というのは、


 このインタビューには意図したかどうかは知らないが、それなりの戦略
めいたものが見られるし、見る限りそこのところに注意している人が誰も
いないからだ。ともあれ、その戦略めいたものの中身ではなく、順を追い
ながら説明していこう。まず、どうもこの記事を「ネット右翼」批判だと
受け止めてその流れからかplummet氏をも「ネット右翼」扱いしていると
読む向きが割合に見られた。勿論そこで「そんな認識は間違っている」と
続くのだが、しかし果たしてその「記事の読み方」は正しいものだろうか。
注意深く記事を読めば解るはずなのだが、記事はplummet氏を幾つかの点
において「ネット右翼」なるものと区別している。まずごく明快なのは
不特定名が「ネット右翼」の基本であると書かれている点。この点だけで
少なくとも「コメント投稿者」と「plummet氏」とのスタンスの差がない
とはとてもいえなくなる。勿論「実は」名無しを装っていたかと言う事は
言えないが、その点で言えば誰であろうとこの記事を書いた記者だろうと
立場は何も変わらないので、やはり問題となりうる点ではないと言う事に
なる。そして、そうしたさしあたりの区別をより明確にするために、記事
に書かれている「plummet氏の行動」を列挙して見る事にしよう。それは
大きく三つの行動にまとめられる。「ブログを見ていた」「小倉氏を揶揄
した」「中継地点になった」である。一つ目は当然何も問題にもならない。
だが二つ目から少し様子が違ってくる。というのは、ここで揶揄している
plummet氏の発言は余り適切に引用されているように読めないからである。


 というのは


 そこで「黙られても困る」と言う事が言われているのだが、これが割合
印象操作気味の発言だと思えると言う事である。それは単純な事で、実際
には小倉氏は「完全に沈黙」してなんていないからである。過去ログでも
plummet氏の「観察記」でも他所でもどこでも参照されれば解るだろうが、
当時の小倉氏のブログはいわゆる炎上状態にありながらもそれなりに更新
されてはいたし、その間「全く無関係なエントリによるスルー」といった
事もされてはいなかったはずである。この事は今の切込隊長氏のブログが
どういった対応をしているのかという事と見比べるとよく解る事かと思う。
「少なくとも問題そのものを回避した訳ではない」というところまでなら
それほど異論はないのではないか。つまり、plummet氏の発言が言わんと
している事は「特定の質問の回避への非難」か、あるいは「今後ありうる
問題全体の回避への非難」というところにしかならないのではなかろうか。


 しかし


 記事の引用文では「実際に黙られてしまって、アレは困ったね」という
何か「炎上を仕掛けておいてそれを手柄か何かのように語る」嫌味な言い
方がなされたかのように読めてしまうし、この書き方だけではそれ以外の
読みをするのはちょっぴり難しいように思える。勿論、実際には小倉氏の
ブログの顛末を見てはいたので「初見の人はそう思うはずだ」という推測
でしかないのだが、果たしてどうだろうか。さらに言えばこの点は小倉氏
側にとっても不名誉な記事の書き方をなされているのではないかとも思う。


 そして


 三点目がある。「中継地点になった」と言う点だ。記事から引用すると

「観察記」を見た人がどんどん、小倉さんのブログに集まってきた

 と言う一文である。だがこれまでこの手の「観察者」と称するサイトや
ブログの常として「観察記は実際の書き込みを誘発している訳ではない」
といった付言があったのではなかったのだろうかという気になる。そして
もっと言うと実際には「plummet氏がどういうつもりであるか」と言う点
じゃあなくて、それが「どう読まれてどう利用されたか」と言う事実的な
ところこそ重要になるはずなのだが、見回った限り誰もこれを不服として
何かを言っていたりはしなかった。勿論全部を見回った自信は全然ないが、
少なくとも大手の新聞社に載った記事でこう書かれているところに相応の
声の大きさで異論がないと言う場合、それは「実際は観察記が書き込みを
誘発していた」と認めてしまったと言う事になってゆくのではなかろうか。


 で。


 何か「ネット右翼」といった目立つ点にばかり着目する向きが結構いた
ように思うけれど、それを囮にうまく引っ掛けられているのではないかと
いう気になる。勿論ここの過去ログを見れば解るように、僕自身の立場で
言えば割合に小倉氏の提案について意義があると考えていると分類されて
おかしくないし、当然に「観察記を装って偏った書き込みを誘発するのは
良くない」と考えてもいる。しかし、そのロジックで考えれば考えるほど
この朝日の記事を根拠にplummet氏のところがどうかなるのは良くない事
だと思えてくる。勿論より否定的な見方としては「ネットでアップされた
記事を知っているのに反論しなかったのだからそれは当然だ」という言い
方は出来るのだろうが、裁判でもなくその確認もない事もあって、単純に
「反論がない事」をもって当人の承諾や同意などと見なす事はごく乱暴な
話だとしか思えない。せめて反論していなかった理由についてくらい確認
される必要がある。公的な手続きでもないものにそんな厳正さは不要だと
さらに言う向きもありうるのはありうるのだろうが、しかし公的ではない
からこそ相手に「反論する義務」のようなものを厳格に負わせるのは無茶
なのである。勿論そんなヤツがいるのかどうかはしらないが、一昨日から
明後日に方向に向けて予め反論しておくという方向で、一応書いておいた。