「開示基準を変えない」→「違法行為が減る」という論理

 http://d.hatena.ne.jp/cafe_maru/20060426#1146045675


 またトラックバックを貰ったところでの議論なんだけれど、ちょっと引用
箇所の意味が解らない。・・・おそらくは「共通IDの副次的効果には期待
しない方が良さそうです。」という発言が「ID制度を導入しても、言論の
自由市場の質はあまり変わらないのでは」という北田氏の質問に対し「開示
するかどうかの基準を変えないとすれば、違法行為をした人だけが情報開示
をされますから、究極的にはその部分が減るだけですね。」という小倉氏の
発言に絡めてあるのだろうなという気はするのだけれど、それは妙だと思う。


 というのは


 まず単にロジカルにだけ言っても、殺人予告なんかの「ドス黒い」ものが
問題にされうると言う現状から「黒い」だけで問題にされ「うる」事になる
というところは言われているのであって、北田氏のいう「質」で言えば相応
には「低下防止」が見込まれると言う返答になるはず。その黒いのは他の人
へと迷惑を与えるからこそ黒いのであって、それが減るのは白い方の発言を
「守る」事に繋がっているから。勿論冤罪とか当たり屋的開示請求への懸念
という辺りを言う向きもあるのはあるのだろうけれど、それはそれだけでは
まだ問題には出来ないだろう。冤罪と言うのは何も共通ID固有の問題では
ないから裁判制度全体の問題になってしまうし、当たり屋的開示請求が有効
になると考えるにはまず「開示基準」を現実的に見定めなければならないし、
その上でそれを管理する司法を出し抜く作戦が考え出されなければならない。


 そして


 そこで重要になる「現実的な」開示基準はまだそれほど明らかじゃあない。


 何故なら


 小倉氏はADRの活用を勧めているけれど、そのADRにどれだけの裁量
権があるのかというところはまだ言われていないからだ。言われているのは
法改正に絡めての「開示しうる限度」だけだろう。判例などはまだない訳だ。


 というか、


 この辺考えるにもっと解らなくなってくるのは、cafe_maru氏自身がその
開示基準に注文を付ける余地がある事を解っているコメントがあるからだ。

2006-04-10 - 売文日誌
どうもです。
私見ですが、どうせADRを活用するなら、そのまま
紛争自体を解決させてしまえば良いとは思いませんか?
損害賠償は電子マネーでとか。そして、相手方が訴訟
による解決を望むのであれば、仮名のまま本訴に移行
するか、例の要件を審理して発信者情報を開示するとか。

※改行は引用者の改変済み


 このコメントは「開示基準が現状のままとは限らない」と解っている人の
コメントだとしか読めないし、実際ADRを使うと小倉氏が言っているなら
その基準は是非はともかく何か変えないはずはないと言う気がするのだけど。
最初に引用した「北田氏に対する小倉氏のコメント」は「たとえ開示基準を
変えなくても」「違法行為は減ります」といささか意地悪く言っただけでは。


 追記:トラックバックを貰ったけど

 短く書くので追記する事にするけれど、単純に
言えば「匿名での審理」が可能になっただけでも
揉め事解消が随分ソフトになるんじゃあないかと
思う。これならシンブルな話だし、揉め事解消の
ハードルが下がって少々は質もよくなるかも、と。


 つまり


 実名なんかの開示方法を変えるならどうとでも
出来そうなので、まずそこからが生産的なのでは。