小倉氏の議論の目的について

http://www.virtual-pop.com/tearoom/archives/000147.html


 再びJ2氏によるまとめ。トレーサビリティと社会的評価下落リスク
という二つのレベルに対する言及が小倉氏の発言には「混在」しており、
賛成者がレベル1について、反対者がレベル2について話すから混乱が
起こるのではないか、と推測している。この推測については異論がない。


 しかし


 その「レベル2」について、小倉氏が言及しているところを読む限り、
そこにはそれなりの理由があると思える。isedで言及しなかった理由は
よく解らないが、このレベル2が説かれる理由は「被害者側が訴える」
と言う時に、そもそも「勝訴できる」ところにまで相手の不法性を立証
出来ていなければならないとされているからだ。そして発信者情報開示
請求を通すと言う事、訴えるための訴えをしなければならない仕組みに
なっているからだ。つまり、被害者側は「当の被害の訴え+発信者情報
開示請求」をしなければならず、しかも「助けてくれ」というだけでは
そのどちらもが通らない仕組みになっている、とされている。これでは
発言に関して訴える事が「現実的に可能である」という事態が抑制的に
機能する事なんてちょっと期待出来ないと言う事になってしまうだろう。


 だから


 小倉氏はその訴訟手続きのうち、発信者情報開示請求を専門家の下に
置きつつ簡略化する仕組みを提案している。ADR、裁判外紛争解決だ。
ここで見て取られるべき事は4つ。「専門家の管理」「被害側の便宜」
「反論の可能性」「匿名での審理」。勝訴の見込みがゼロではない、と
いう判断は専門家によってなされる。そこで可能になるのはそういった
専門家に「助けを求める」事だ。その判断の正当性は勿論仲裁者の良心
とか能力に依存するが、裁判外でも現実的な訴えの内容を受け止めうる
受け皿としてこのADRは想定されているだろう。そして匿名同士での
審理を可能にするために「裁判外」での紛争解決が考えられたと思える。
ここではともかく「問題がある」という事態に応じて審理が行われる事
になるのだろうと考えられるので、現状よりも柔軟な対応が期待出来る。
そしてそのオンラインだとか匿名での審理で問題が解決したのなら勿論
裁判は不要になるし、そのような状況でなおも個人情報開示を許可する
専門家もまずはいないと考えて差し支えないのではないか。関連議論を
見ている限り、時々この「匿名での審理」の必要性を訴えていた人らが
見られた。このADRの活用であれば、極端な開示にも極端な秘匿にも
どちらにもならずに「紛争解決」を第一義に置く事が出来るからだろう。


 そして


 この紛争解決が現実的に機能する場合、特に真っ当な議論を抑制する
事なしに、言論の質の「下落だけは防ぐ」事が出来るのではなかろうか。